千葉大学「紫千会」のブログ!

千葉大学和楽器サークル「紫千会」のブログです。部員みんなで書いているので、ぜひ見てくださいね!

いとたけ考 12月 独奏曲との闘い

2017年も残すところ1か月を切り、なんだかあっという間の1年間でした。私にとってこの一年、会長として仕事をさせてもらいましたが、日々学ばされることばかりで、気が付けば今週末には退役です。仕事としては定期演奏会で大方終わりではありますが、気持ちの上では定演が終わってもまだまだ気を抜けないものですね。

定演で後輩たちの演奏を見ていて、去年六段の調の暗譜を必死に頑張っていたのが、2年合奏、大合奏、尺八だと尺重奏でのソロ、人によっては個人曲と、立派にこなせるようになっていて、一年間は決して無駄じゃないなと感じました。

 

さて、今月のタイトルは「独奏曲との闘い」とさせていただきました。

尺八やってるって言うと、よく「何か吹いてください♪」と言われますが、私にとっては意外と悩ましいお願いでした。

というのも、私の場合、縁あって小さい頃から尺八を手にしていますが、今までずっと箏や三味線との合奏曲ばかりやっており、尺八の独奏曲をやったことがなかったのです。

高校までは知人に合奏相手などおらず、「何か吹いてください♪」に対して、春の海とかの尺八の部分を独奏曲面して吹いていました。その度に、もの悲しさを覚えたものです。

大学でサークルに入って多くの合奏相手ができ、それまでの悩みは自然と無くなっていきました。

しかし、この一年で依頼演奏や部内コンサート、大学祭など、サークルの演奏機会が増え、合奏のネタ切れやスケジュールの都合で合奏相手が見つからない事態が起こり、「何か吹いてください♪」の悪夢が再びやってきたのです。

このままではいかん。そう思い、夏合宿で先生に独奏曲のお稽古をつけていただけませんかとお願いしました。曲は山本邦山先生作曲の「甲乙(かんおつ)」でした。

この曲は古典尺八のような渋い、落ち着いた部分と、西洋音楽的で現代的な速い部分とでなっており、なかなか難しいものでした。実際、何週間かぶりに吹こうとすると指が回りません(笑)

指を動かすだけでも苦労しましたが、それ以上に苦労しているのは、この曲を全く「聴かせられる」ようにならないことです。こちらは現在進行形で、まだ納得がいったことはありません。

独奏曲を「聴かせる」にはテクニックは当然ですが、「間」「強弱」「緩急」「抑揚」など、すべてを満足にしないといけません。

合奏曲では尺八はメインである「歌」や箏三味線の音を引き立てるために「きれいに」吹く必要があります。ここでいう「きれい」というのは音がきれいとかではなくて、フレーズのまとめ方や音の処理の仕方などを指しますが、要は「お淑やか」である方がいいと思います。

合奏曲ばかりやってきたせいで、独奏曲も同じように吹けばきれいに聞こえるだろうと思っていましたが、初めて自分の「甲乙」の録音を聞いたときはあまりに大人しくて面白みのなさに独奏曲の難しさを痛感しました。

独奏曲は尺八がメインなんだから、合奏曲と同じ吹き方じゃ大人しく聞こえてしまう。だからと言って、大音量で吹くとか、装飾音を入れまくるとか、そういうものでもないな…

答えが見つからずにいました。

 

そんなある時、演奏会で聴いた独奏曲にものすごく痺れたことがありました。なぜ痺れたのかといえば、会場全体が曲の持つ「緊張感」に包まれていたんですね。そういえばと思って自分の持っているプロの音源で気に入っているやつをいくつか聴きなおしてみましたが、やはりそれらは「緊張感」を持っていました。

曲の持つ緊張感って何だろうと改めて考えてみました。やはり以前書いた「間」も関係しますが、間以外にも尺八の場合は音によって音色や音量が違うので、その組み合わせを考えることなのでは?とも思いました。

前後の音を考えて、その音のバランスやその音への装飾音を入れるか否かを判断するのは合奏曲でも同じですが、合奏曲ではきれいになるようにやっていたのを、独奏曲の場合にはあえてきれいにせずに少し変化をつけることで緊張感を生み出せるのではないかということです。

といっても、これが答えなのかなぁ…よくわかりません。少なくともこれだけではないとは思います。

それだけ独奏曲は奥が深いものなのですね。

大学生活の残りでもう少し見つけられるといいのですが…

 

会長としてブログを更新するのはこれが最後になります。

会長引退と同時にこの毎月の更新もバトンタッチしようと思っています。

毎月お付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。

それでは、またいつの日かお会いしましょう。