千葉大学「紫千会」のブログ!

千葉大学和楽器サークル「紫千会」のブログです。部員みんなで書いているので、ぜひ見てくださいね!

いとたけ考 12月

とうとう12月となりました。今年も残すところわずかです。先日の定期演奏会には大変多くのお客様にご来場いただき、誠にありがとうございました!名称を改めて第一回の記念すべき演奏会でしたが、無事に開催することができました。これからも千葉大学紫千会をどうぞよろしくお願いいたします。m(__)m

さて、今月の話題ですが、曲の出だしのあれこれを書いてみたいと思います。曲の出だし…演奏するうえで一番緊張する瞬間ではないでしょうか。特に尺八は音が100%出る保証はありませんから(?)、一番シビアなのかもしれません。プロの演奏家でも「いやぁ~なかなか上手くいかないもんですよ~笑」と仰っていました。(笑)

一年の計は元旦にあり、といいますが、曲の出だしもまさにそのようなものです。

特に尺八では弦楽器と違って音の立ち上がりのタイムラグといった問題もあります。弦楽器と音のアクセントが一致するように音を出すというのもなかなか難しいところだなと思うところです。

それはさておき、一口に出だしといっても奏法もいくつかあります。古曲では装飾音を入れて一発目の音を目立たせることが一般です。現代曲だと逆に装飾音は指示がない場合は入れないのが原則ですし、フェードインする感じで始めたり、逆に思いっきりアクセントをつけたり、様々です。

山田流筝曲に「赤壁賦」という曲があります。中能島欣一氏が作曲したもので、昭和初期の作品ですが、この曲は箏の前奏の後、尺八が入ります。この尺八の出だしが時代によってちょっと違うんですね。どういうことかというと、赤壁賦が発表されたころの音源を聴いてみると、尺八の出だしは装飾音が入った威勢のいい感じで始まっています。箏の刻んできた前奏のメロディに新たなスパイスが入ったような感覚がします。それに対し、最近の録音ではどの奏者も装飾音は入れずにフェードインする形で演奏しています。この違いは何でしょうか。音楽は解釈学であったりまた当時の流行りというか、一般な吹き方に収束するということもあり、大きな理由があるわけではないと思います。赤壁賦は月を見ながら小舟で宴をする者たちが、三国志の激戦地赤壁に差し掛かった時に合戦の様子を思うという背景になっていて、最初の箏の前奏はまさに川の水の流れや小舟がゆっくりと進むような印象がある。これを考えると水の流れに乗る形で尺八が入る、つまりフェードインするのが自然に聞こえるのかもしれない。どちらがいいというような話ではなく、時代によって演奏の解釈も変わってきているというのは何とも興味深いことではないでしょうか。赤壁賦を聴く機会がありましたら、尺八の出だしにも注意して聴いてみてください!

2016年のいとたけ考は今回が最後になります。3月くらいから毎月マニアック?な話ばかり書いてきましたが(笑)、2017年も引き続き書いていこうと思います。来年もよろしくお願いいたします。

みなさま、よいお年をお迎えくださいませ!